「はい、そうです。
 今年、卒業なんです。

 最初は卒業したら、おじさんの会社で働かせてもらうことになっていたのですが。

 おじさんが、ちょっと見合いしてみないかと言ってこられて」

「おじさんって、親戚の人?」

 はい、と彼女は言う。

「父の兄に当たる人です。
 父が行方不明になってから、ずっと私や母の面倒を見てくれていました。

 金銭面でもずいぶんお世話になっていますし。

 ご恩をお返ししなければと思いまして」

「そうなんだ?
 でも、それで結婚するって言うのもねー」
と羽村は笑う。

 まるで、吉原に売られるみたいだね、と言うと、

「いえいえ、とんでもないです。
 それに、私、羽村さん、ちょっと好みなので、お気になさらず」
と照れたように言われて、少し嬉しく、

「へえ、どんなところが?」
と突っ込んで訊いてみた。

「はい、顔が」
とこちらを見ないまま、彼女は言う。