夜、仕事を終え、帰ろうとした羽村は、なんとなく嫌な予感がして、ロビーで立ち止まる。
隅の自動販売機の近くまで戻り、電話した。
すぐに母親が出る。
「ごめん。
お父さんにかわって」
と言うと、はいはい、と言いながら、かわってくれた。
「もしもし? お父さん?
僕、見合いするんだって?」
嫌味まじりにそう言ったつもりが、
『おお、聞いたか』
と父は機嫌よく返してくる。
聞いたかじゃないよ、と羽村は思った。
っていうか、自分が見合いするって、他所から、まず聞くのっておかしくない? と思いながら、
「どういうこと?」
と聞こうとしたが、
「ど……」
まで言ったところで、父親がペラペラしゃべり出す。



