課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~

「羽村さん、結婚してくださいー」
「やだ」

 美人から頼まれても、それだけはお断りだ。

 真湖りんに未練もあるし、今の自由な生活を手放すのもごめんだからだ。

 だが、彼女のしょんぼり具合は、まるで、街角にダンボールに入って濡れそぼっている仔猫並みだった。

 勘弁して……と思いながらも、余程、困っているのだろうなとは思っていた。

「あのさ、僕、噂通りの悪い男なんで、やめた方がいいよ」
と少しやさしく言ってみたが。

 彼女は自分を見上げ、祈るように手を合わせて、言ってくる。

「大丈夫です。
 私、貴方の人格には期待していませんっ」

 何処までもストレートな人だった。

 ……助けて、真湖りん……と思いながら、羽村は、

「……ごめん。
 とりあえず、破談にして」
と名前もわからぬ彼女に言っていた。