いつか、きっと。

私と友也の付き合いは順調そのものだった。

"偽者彼女"になってからは、夢見てるのかな?なんて思ってしまうような出来事がいっぱいで、これが夢だったらいつまでも醒めなければいいなと本気で願った。

ハロウィン、クリスマス、お正月、バレンタインにホワイトデー。

今までだってイベントは好きだったし家族や友達と楽しんできた。

だけど友也と一緒っていうだけでこんなにも幸せだなんて。

数あるイベントの中でも、私が一番テンションを上げたのは、長崎人の血が騒ぐあのお祭り。

『長崎くんち』

ずっと友也と一緒に行きたいって思っていたから、本当に夢なんじゃないかと思った。

例によって中間テスト前だから、大っぴらにはしゃぐことはできなかったけど、友也とおくんちに行けるだけで十分嬉しかった。

本当かどうかは知らないけど、おくんちに一緒に行くために彼氏や彼女を作るっていう話を聞いたこともある。

大好きな友也と行けるなんて、私は幸せだよね。


その年のおくんちは金土日という最高の日程だったため、私たちは中日(なかび)の土曜日に行く事にした。

午前中は部活、午後からおくんちデート、夜は試験勉強というスケジュールも立てたし。

長崎駅で待ち合わせた私たちは邪魔な荷物をコインロッカーに預け、制服のままお旅所がある大波止へと向かった。

「今日は中日やったね。明日のお上り見たかねぇ」

おくんちの前日(まえび)には『お下り』と言って諏訪神社から神様が神輿に乗ってお旅所までやって来る。

そして中日(なかび)を経て最終日の後日(あとび)にはまた神様がお諏訪さんに帰る『お上り』がある。

特に県庁坂を神輿が駆け上がって行く勇壮な『お上り』は人気があるのだ。

「そいはさすがに無理ばい。俺明日は部活休めんし。明日美は誰かと……青柳さんでも誘って見に来れば?」

まあそう言われるのは分かっていたけど。

「友也とじゃなからんば、つまらんし。いいもんまた今年も勉強頑張って成績上げてやるけん」