「お母さん!お母さん!!ねえあのさぁ」

「明日美!?今外から帰ってきたやろ……。またコンビニ行ってきたとね!この不良娘が……。お母さんは悲しかばい」

「ちょっ、違うって!ノート買いに行っただけ……。っていうか、お母さんあのさ、御子柴さんちに遊びに行こう!」

「は?なんで今から。お母さん今日行ってきたけん。だいたいこがん時間に迷惑たい。あんたは早よ勉強せんね」

やっぱりね、予想通りのリアクション。

でもここで諦める訳にはいかない。

「その勉強のためさ。友也が九時ごろ来んねって言うけんがさ。でもお母さんが一緒じゃなからんばダメって」

お母さんはキョトンとして私に聞いた。

「なんで……。勉強なら明日美だけでよかろ?」

う、やっぱりね。

私だってそう思ったけどさ……。

これは出来れば言いたくなかったんだけどな。

「だって友也が『年頃の女が夜に男の家に来るともなぁ』って言うとやもん。そいけんお母さん同伴じゃなかったら()んなってことやろ」

一瞬だけ真顔になったお母さんは、次の瞬間ブフーっと盛大に吹き出し笑い転げた。

「ちょっとぉ!友也くんって今時の若者らしからぬ……。意外と古風なとこのあっとね!!あっはっはっはっは、あー面白か!そうねそんならお母さんも一緒に行ってやらんばたい。九時って言うたよね?手ぶらでは行かれんけんなんか持って行かんば。それにしても明日美、あんた友也くんに大事にされとるとね!羨ましかばい」

もう…………。

だから言いたくなかったのに。

お母さん絶対笑うと思ったんだ。

でも羨ましいとか、大事にされてるとか、本当にそうなのかな。

そうなんだったら私だって嬉しいけど。

ダメダメ、また勘違いしそうになってるってば。

友也の部屋に行くのならもうちょっとマシな格好がいいよね。

かといって気合い入れすぎても引かれるだろうし……難しいな。

とりあえずリラックスしつつ可愛さを兼ね備えた部屋着に着替えよう。

「明日美、九時になったばい!行こうで」

なんだかんだ乗り気なお母さんに笑って、御子柴さんちへ。