「え、じゃあ町田くん待っとってくれる?先に帰らんでね!」

やっぱり一緒に帰るんだ。

仲が良くていいなあ。

「京子は涼介くんと帰らんと?」

「涼介は先に帰ったよ。あとで約束しとるけん」

この後は当然デートか。

こちらも仲良さそうで羨ましい。

「おい、明日美!」

来たっ!!

大好きな声で名前を呼ばれ、振り向くと友也が私を真っ直ぐに見ている。

「俺、ちょっと寄り道して帰りたかとけどさ」

え……そうなんだ……。

「ふうん……分かった。じゃあ先に帰ってよかよ」

一緒に帰ろうって言ってくれると期待してたのに。

聞きたいことも言いたいこともあったのに。

「なんで?待っとくけん早よう写真撮ってこんね」

「だって友也、寄り道するとやろ。そんなら……」

先に帰ったほうがいいんじゃないの?

「俺は、明日美と一緒に寄りたかとこのあっと。だけん待っとく」

「う、うん……。じゃ、ちょっと行ってくるね」

先生と話をしたり写真を撮ったりしながらも、私の気持ちはこの後に向かっていた。

学校にいる間は友達がいて友也と二人きりで話すことができなかったから、二人で一緒に帰れないかなって思ってた。

だって今日が最後だし。

友也が私を待っててくれるってことは、なにか私に言いたいことがあるのかも知れない。

『寄り道したいところがある』って言ってたけど……。

一体どこに行こうとしてるんだろう?

「たまには顔出せよ、お前ら。高校で頑張ってるって報告待っとるけんな。まずは明日の合格発表、期待しとるぞ!」

「はい!受かりましたって報告に来ます!!」

「生田は合格決まって良かったな。J商でも今の調子で頑張れよ!」

「ありがとうございます。成績落ちないように頑張ります!」

担任の先生とお別れも出来たし、もう思い残す事はないかな。

中学での思い出を胸に、新たな気持ちで高校へと進まなきゃね。

友也が待ってる。

心が『早く早く』と急かしているようだった。