いつか、きっと。

「瀬名くんごめん。予定より一時間くらい遅くなりそう。到着予定は一時ごろかな」



とりあえず電話で謝る。



『さては寝坊して間に合わんかったな。しょんなかな、一時間あるならちょっと会社に行ってくる。月曜から慣らし運転やし、だれか出社しとるかもしれんし。じゃ、一時ごろにかもめ広場に集合な』



良かった、怒ってなくて。

せっかくランチ奢ってくれるっていうのに、機嫌損ねたらどうしようかと内心ドキドキしてた。

寝坊してしまったこともバレてたし。

瀬名くんだから別にいいけど。



新しい職場で緊張してたし、知らず知らず疲れが溜まってたのかも。

寝不足な感じもしてるし。



でも友也とのデートだったら、寝坊なんてしたことなかった。

どんなに疲れてても、体がキツくても、目覚ましが鳴る前にちゃんと目が覚めてたし。



友也は今日は休みかな。

授業が休みでも、学校で行事に参加しなければいけないこともあったよね。

先生はいろいろと大変だ。



やだ私ったら。

今日は友也に会う予定はないのに。

長崎に帰るからって、まだ友也に会う心の準備はできてないけど、気がついたら友也のことを考えてしまう。



博多から長崎まで列車で約二時間。

どうせ暇だから道中は眠っていようと思っていたけれど、ウトウトする程度の浅い眠りしかできなかった。



久しぶりに長崎に帰るとはいっても、まだ一週間も経っていないし。

懐かしむほど長い間離れていた訳じゃないんだから、そんなに興奮はしない。



お母さんに電話で今日帰ることを伝えたら、ものすごく喜んでくれたけど。

くれぐれもお隣の御子柴さんには内緒にしておいてと口止めしておいたから、友也は私が帰ることを知らないはず。



『ああそういえば!友也くんが、服お買…………おうかな?って言いよったらしかよ。あはは』



なんて、意味不明なことを言ってたけど。

ああ、御子柴家へのお土産に佐世保銘菓でも買ってくれば良かったかな?

"九十九島せんぺい"とか。

それならアミュプラザでも買えそうだよね。

御子柴家では私は佐世保に出張してることになっているんだから、それくらい気を遣うべきかも。







十二時五十五分に長崎駅に到着。

ホームから改札を通って、かもめ広場へ。



また友也との別れの場面を思い出してしまう。

いつかはこの胸の痛みもなくなるんだろうか。