いつか、きっと。

『ああ言うとば忘れるところやった。そのプレゼントけどさ、お前が福岡に戻った時に唯子に渡してくれんか?』



「瀬名くんが自分で渡した方がよかっじゃなかと?」



そりゃ唯子さんは福岡にいるから、私が渡してもいいけど。

それでいいのかな。



『本当は自分で手渡したかけど。まだ退院したばかりやし、今は仕事復帰に専念したかし。唯子も忙しそうでさ。そいに唯子が生田に会ってみたかって言いよるけん、良かったら渡してほしかとけど』



「あ、そうなんだ。じゃあ帰った時に唯子さんの連絡先とか教えてね」



はあ……。

なんで瀬名くんと電話してると長くなってしまうんだろう。

長電話あまり好きじゃないって前にも言ったはずなんだけどな。



土曜日にはまた長崎か。

しばらく帰るつもりなかったのに。

思い通りにならないことばかりだ。



帰った時に友也に会ってしまったらどうする?

もちろん知らせるつもりはないけど、家に帰らない訳にはいかないし。

隣の家なんだから、会う可能性はないとは言えない。



やっぱり口止めしないとダメかな。

とりあえずお母さんたちには土曜日に帰ることを知らせないと。








土曜日。



『昼目掛けて帰ってこいよ』



なんて瀬名くんに言われていたから、ちょうどお昼時に長崎に着くようにと考えていた。



九時五十五分、博多駅発の白いかもめに乗るつもりでいたんだけど…………。

寝坊して間に合わなかった。



目が覚めたのは、九時三十三分。

慌てて支度したけど、アパートを出る頃にはもう私が乗るはずだった白いかもめは出発した後だった。

私が住んでいるアパートから博多駅まではバスで移動。

博多駅までそんなに距離は離れていないと思うのに、なかなか到着せず苛ついてしまう。



「あー、また信号待ち。もう目の前に見えとるとに」



長崎とは感覚が違うのに、まだ慣れていないから仕方がない。

道路の幅も車線の多さも、混雑の具合も、福岡は都会だなとつくづく思った。






「……さっき出たばかりなんですか?」



時計を見ると、十時十八分。

十時十五分発のかもめにも間に合わなかった。



「次の長崎行きは、十時五十五分発の白いかもめになりますが。席は若干余裕がございます」



「じゃあ、それでお願いします」



予定より一時間遅れ。

瀬名くん、怒らないといいけど。