「小野は瀬名の福岡出向を推していたからな。経験を積ませるためにももっと勉強させた方がいいっていう考えだ。だからここで自分が福岡に行くって事は瀬名のチャンスを潰してしまうような気がしてるんだろう。瀬名の回復を信じて、アイツに道を残しておきたいって上役に直談判したらしい。しかし、まだ意識不明の状態が続いているしな」

「そうですよね。このままじゃ福岡も人員不足ってことになるんじゃないですか?小野さんでなくても誰か補充するとなれば当然瀬名くんの出向は難しくなってしまいますよね」

じゃあどうすればいいんだろう?

こっちは小野さんが来てくれたら瀬名くんの穴を埋めてくれるだけでなく、他の社員の仕事まで奪ってしまうかもって感じだけど。

「そこでだ。生田、お前にしばらく福岡へ出張してもらいたいんだ」

「へっ?…………私、ですか!?」

予想外の展開に頭が混乱してる。

私なんかが瀬名くんの代わりに福岡に行って大丈夫なのかな。

「小野が気にかけてるのは瀬名だけじゃない。今回の出向の人選では生田も候補に上がっていたからな。総合的に判断した結果、瀬名に決まったんだけど……。小野としては自分が福岡に行くより生田のスキルアップを狙うべきだろうという考えらしい。どうだ生田?」

スキルアップ……。

正直言って自信がない。

今は自分のスキルアップよりも、瀬名くんのために役に立ちたいという思いの方が強い。

「ちょっと荷が重いような気がします。私に瀬名くんの代わりが勤まるんでしょうか?」

「そがん気負わんでよかぞ。瀬名が仕事復帰するまでの繋ぎやし。それまでの間、お前もいい経験になるやろう」

そっか、瀬名くんが復帰できたら交代するってことか。

それじゃ私は瀬名くんの出向を実現させるため、バトンを繋ぐという役割を担うことになるんだ。

「でも、もし瀬名くんの意識が戻らなかったら……どうなるんですか!?」

私はずっと瀬名くんの代理で福岡勤務になるの?