いつか、きっと。

翌日、瀬名くんが事故で入院したことで会社は混乱していた。

本来なら今日から長崎での最後の引継ぎに入る予定だったのだ。

出向先の福岡での引継ぎを済ませ、こっちに帰ってきた瀬名くんだったけど、事故に遭ったせいで仕事復帰がいつになるのか目処は立っていない。

だってまだ、意識が戻っていないらしいし。

課長は朝一から役員会に呼ばれている。

そこで瀬名くんの事故の報告をしているはずだ。

そしてこれからの対応についても協議されているんだろう。

私は自分の仕事をしつつ、瀬名くんから引き継がれるはずだった仕事の方にも手を伸ばしてみた。

同じ部署とはいえ、それぞれ担当が決まってるからお互いの仕事内容を何でもかんでも把握できているわけではない。

だからと言って瀬名くんが担当していた仕事を『分からないからできません』とは言いたくなかった。

自分だけでは分からなくても、上司や先輩に尋ねてみたりしながら作業を進めていった。

少しでも瀬名くんの力になれるように……。




事故から一週間が経過した。

瀬名くんの意識はまだもどっていない。

課長はこの一週間の間も瀬名くんのご両親と連絡をとっていたようだけど……。

「まだ意識がないままですか……」

「ああ、まだ意識不明だと。医者の話によると、怪我の範囲も出血も最小限に抑えられたってことらしいがな。どうして意識が戻らんとやろうな」

脳挫傷って、脳が怪我してるってことだよね。

それでも手術しない場合もあるらしいし、軽傷か重傷かは人それぞれなんだろう。

意識がいつ戻るのか分からない今の状態では不安がつきまとう。

同僚の私でさえそうなんだから、ご家族の心痛は察するにあまりある。

「あの……。瀬名くんから直接引き継ぎしてもらえないから、今いるメンバーで相談しながら作業してますけど。このまま進めていいものかどうか心配です」

不安と言えば、瀬名くんの容態はもちろんだけど、仕事の方も手探り状態な感じなのが否めない。