突っ伏していた顔をようやく上げたけど、まだ私の方は見てくれない友也。

「そいは……その……インフルやったろ?明日美。母ちゃんから聞いて、治るまでは会いに行くなって言われとった。本当は俺も明日美から連絡来るかなって思ったけど、具合悪かったとなら仕方なかもんな」

やっぱり、インフルのせいにするんだ。

例え私がインフルだから会えないにしても、メールくらいしてくれたってよかったのに。

「本当にそれだけ?インフルだけが理由なの?」

さっきから誰と話しているつもりなのか。

ちゃんと私の方を見てよ!

そんな私の思いが通じたのかどうかは分からないけど、ようやく私の方を向いた友也が、口を開く。

「鋭かな明日美は。確かにそれだけじゃなかよ。インフルのせいだけにしとくつもりやったけど、そがん言わせたかとなら言うよ。面倒な説明は青柳さんに任せようと思ったっさ。実際そうなったろ?な、俺から連絡せんで良かった」

もういい。

もう聞きたくない……。

「そう……。思い通りになって良かったね。私たち、本当に付き合いよった訳じゃなかけんね。契約解除するきっかけの出来たけん友也は満足……?どうせなら私は未来よりも友也の口から聞きたかったけどね」

「いや、あのさ……」

「ああ未来がね、友也と付き合うごとなったけんって、私と友也に会うなとは言わんって。そうよね私たち隣に住んどるとやし、それに親友やったら会わんともおかしかよね。私にとっては、未来も友也も親友やけん…………」

そうよ、未来も友也も親友。

昔からそうだったじゃない。



外はまだ雨が降り続いている。

この雨は私の心を表しているのだろうか。

しとしとと静かに車の窓を伝って流れていく様は、涙のようだ。

この雨はいつか止むだろうけど、私の心の涙雨は止みそうにない。

「乗せてくれてありがとう。傘持っとらんやったけん助かった。もうずぶ濡れは勘弁。じゃ、またね友也」

友也の顔を見ることなくお礼を言い、別れを告げて車を降りた。