これ以上の長居は無用だ。

早くこの場を離れないと、私の嘘が見破られてしまいそうだから……。

「おい、明日美!」

今にも駆け出そうとしてた私を引き留める友也。

まさか無視する訳にもいかないから、立ち止まって振り返る。

何か言いたげなのに、何も言わない友也。

沈黙が居心地悪い……。

「……あのさ、俺…………」

な、何!?

高まる緊張感に足が震えてきそう。

「俺、コーラで」

さっきの微妙な空気が嘘のように、爽やかな笑顔で告げられた。

「あ、うん、OK。未来は?」

「私は、明日美と同じでよかよ」

「分かった!じゃあ二人とも、あとでね!」

ホッとして二人に手を振ると、瀬名くんの後を追うために走って階段を下りた。

瀬名くんがタバコを吸うと言い出したのは本当なんだろう。

上手い具合に作戦実行のチャンスがやって来たんだ。

だけど瀬名くんは作戦のことなんて知らないから、この後は私が上手くフォローしないといけないよね。

責任重大だ……。


瀬名くんどこでタバコ吸うつもりなんだろう?

自分の車で?

それだったらちょっと困るな……。

狭い空間で二人きりってのも嫌だし、タバコ好きじゃないし。

もし車にいたら、連れ出して一緒に飲み物買いに行こう。

そう密かに意気込んで、瀬名くんの車を目指そうと早足で歩いていると、後ろから声をかけられた。

「生田!お前ひとりでどうしたとや。御子柴や未来ちゃんは?」

「ああ瀬名くん!探しよったとよ。車でタバコ吸いよるとかなって思って。すぐ見つかって良かったー」

車の中じゃなくて良かった。

いま友也と離れているとはいえ、瀬名くんの車に乗るのは気が引ける。

友也以外の男の人の車になんて、できれば乗りたくないし。

「俺、車ではタバコ吸わんけん。嘘って思うなら乗ってみる?」

「遠慮しとく。瀬名くんの言う事ば信じるし。それよりもさ、飲み物買いに行こうよ。未来と友也の分もね!」

車に戻ろうとした瀬名くんを強引に売店の方に連れて行った。

友也と未来が今頃どんな話をしてるのか、気にしながら。