頂上の展望台からは、長崎市街を一望できて眺めが最高だった。

「そういえば、中学の時にもここから景色ば眺めたと思い出した!あの時は男子と女子は別々に帰ったけん、友也たちはおらんかったとね」

「そうばい。あとで聞いたもんなー。みんなで『女子ばっかりズルか』って騒いだけどな。今考えてみればあがんことで大騒ぎするって、ガキやったよな俺ら」

「ふふっ本当ね。でもあの頃はあの頃で楽しかったけどねー」

もう十年以上前の話なのに、思い出としてしっかりと胸に刻み込まれている中学時代。

その思い出にはいつも隣に友也がいた。

スカイウェイのことをすぐに思い出せなかったのは、そこに友也がいなかったからなのかな。

しばらく景色を眺めながら、懐かしい話に花を咲かせていた。

時間が経つのも忘れてタイムトリップしそうな私を現実に引き戻したのは、不意に聞こえた未来の呼び声。

「明日美、明日美ちょっと来て!」

「ん、なに未来。あれ、そういえば瀬名くんはどこ行ったと?」

「瀬名くんには先に駐車場まで下りてもらったけん。明日美も瀬名くんば追っかけて。明日美たちがおらん間に御子柴くんに……」

ああ、とうとう来たんだ。

例の作戦を決行する時が……。

「分かった。じゃ私も先に下りるね。友也には言わん方がよかかな」

「俺には何て?明日美」

「うわっ!!ビックリしたー!!」

いつの間にか友也が私のすぐ後ろに来ていた。

今の会話、聞かれてなかったかな。

「青柳さん、瀬名の姿の見えんけど。あいつ青柳さんば放ったらかしにしてどこに消えたと?」

「ああ、違うと。ちょっとタバコ吸いとうなったんじゃなかかな。先に下りとくって、ついさっき。だけんね、みんなの飲み物ば買っとってって頼んだと」

未来、こういう場面でも動じずにペラペラと嘘の説明できるなんてすごい。

私も怪しまれないようにしなきゃ。

「飲み物って、何ば買うてくれるつもりやろか。瀬名くんに任せると心配やけん私も行ってくる!」