野外ステージや広い駐車場、公園などがある場所は稲佐山の中腹になる。

そこから頂上まではシャトルバスも定期的に運行しているけど、歩いて上ることもできる。

昔はスカイウェイという乗り物があって、中腹から頂上まで行くことができた。

私たちが高校生くらいまではあった気がするけど、知らないうちにいつの間にかなくなってた。

「私、いつスカイウェイに乗ったんだったっけな……」

「中学の時やろ?」

友也が私の独り言に反応した。

「なんで友也がそがんこと……」

もしかして、一緒に稲佐山に来たことがあった?私たち。

「ほら、中学の時にテニスの試合の柿泊であった時さ。女子だけ先生が帰りに稲佐山に連れていってくれたことのあったやろ。忘れたとか明日美」

「ああ、そうやったかな。そう言われればそうやった気のする」

男子はいなかったのか。

あの時のこと忘れた訳じゃないけど、あんまり覚えていない。

「瀬名くん、ここの鹿や猿にはエサはやられんみたいだね。あ、見て見て!あそこの猿山でケンカの始まった!!」

「おおっ!マジで!!こらちょっと写真撮っとこう。未来ちゃんも一緒に撮ろうか?」

「なんで!ケンカしよる猿の前でどがんして写ればよかと?猿だけ撮らんねー」

あの二人、楽しそうに盛り上がってる。

意外と気が合うんじゃないのかな。

でもあんまり仲良くされてもな……。

「おーい、そろそろ行こうで。そがん猿のケンカば見ときたかとなら置いて行くぞー」

友也が未来と瀬名くんに呼びかける。

そんなに急ぐ必要はないんだけど、猿と鹿しかいないし餌やりもできないんじゃね。

それに例の作戦もあるし。

友也はそんな私の心の内なんか知らずにいるんだろうけど。

「友也、先に行っとこうか?二人もすぐ追いついてくるやろ。展望台に早う行こう!!」

「そうすっか。じゃ、お先にー!行くぞ明日美」

私の手を取って引っ張ってくれる友也。

後ろから未来と瀬名くんがワーワーと文句言ってるのを聞きながら、友也と手を繋いで頂上を目指した。