「友也くんは?お隣の友也くんはどう?」

ドキッとした。

ここで友也の名前が出てくるなんて思ってなくて、不自然なくらいに体が震えてしまう。

「あ、寒か?うちすきま風入ってくるけんね……」

「そっかちょっとゾクッとしたけど大丈夫。友也もそうけど、Mアパートの人はほとんど向こうの中学に行くらしか。うちのお母さん社宅に引っ越して友達ができて楽しそうなんだ。友也のお母さんとも仲良うなって、そのせいかも知れん。同じ学年やし同じ中学の方が都合の良かっじゃなかかな」

友也とキスしたなんて、私にとっては事故だったとはいえ未来には言えなかった。

友也ともあれ以来……お互いに「ごめん」と謝り合って以来、話題に出てきたことは一度もない。

私は毎日忘れたことなんてないのに、友也はどう思っているのだろう。

「ふうん……。知らんかったなぁ、中学ば選べるごとなっとったって。そんなら私も一緒に向こうの中学に行きたか。私も明日美と一緒に行きたか……」

それは私も思った。

未来も一緒に行けるのなら、どんなにいいだろう。

だけどそれは多分無理な話だよね。

「あっ、そうだ!じゃあさ、明日美がおばあちゃんちに住めばいいんじゃ?明日美がこっちに来れば一緒に行けるやろ?」

ものすごくいいアイデアが浮かんだって言いたげな未来に、なんと返せばいいのか分からなくなって、言葉につまってしまう。

「いや、そいがさ、うーん……」

未来をガッカリさせるのが申し訳なくなり、うまく言葉にならない。

「え、なんか問題ある?」

キョトンとしている未来に、どう言えばいいのか分からないけど、いつまでも黙ってる訳にいかない。

「だけんね、それは多分……難しかと思う。引っ越しが決まった時にも同じこと考えたけど、ダメって言われたと。家族一緒に暮らすのは当たり前って……」

「えー。おばあちゃんとおじいちゃんも明日美の家族たい……」

心の底からガッカリしたような暗い声で反論した未来。

私も引っ越すと聞いたときに同じことを言ったから気持ちは分かるよ。

未来にかける言葉を見つけられない。

さっきから二人とも黙ったまま時間だけが過ぎていった。

どうして?

どうして選べるようになったの?

あなたの通う中学はココです!ってきちんと決めてくれたら、こんなことにならずに済んだのに。