いつか、きっと。

「明日美、ちょっと寄り道」

「へっ!?何処に……」

階段を下りて一階のロビーに向かうと思ったのに、進路が急に脇道に逸れた。

あ、もしかしてトイレなの?

と思ったのに、トイレの前を素通りしていく。

「友也、トイレじゃなかったと?」

「は?誰がそがんこと言うた。よかけんちょっと来て」

トイレの先には何もなさそうだけど、何処に行くんだろう?

人気のない廊下の突き当たりにドアがある。

そのドアの向こうは、階段だった。

さすがブリックホール。

誰も使わなさそうにひっそりとした階段なのに、絨毯を敷き詰めてあって足音も立たないし立派な作りだ。

なんて、そんなことはどうでもいい。

踊り場の隅っこで二人きり……。早くみんなと合流した方がいいんじゃないの?

「ねえ、みんな待っとるとじゃなかと?写真撮るとやろ」

「そがん急がんでよかって。良彦も涼介も多分今頃……」

人混みから抜け出して急に二人きり。

「なぁ明日美。同窓会にはまさかその姿では行かんよな?」

「本当はこがん振袖とか滅多に着ることなかし、脱ぎとうなかけど。レンタルやし、汚しても困るけんね。同窓会には着替えて行くよ。でもなんで?」

「ああ良かった。俺遅れて行くけん、明日美のその艶姿ば俺以外の男に見られるとかと思うたら気が気じゃなか」

や、やだ友也ったら。

艶姿だなんて……恥ずかしい。

この格好は友也のためだと言ってもいいくらいなんだからね。

繋いだままになってた手を軽く引かれ、当たり前のように友也の腕に抱き留められた。

「着崩れしたらいかんけん、程々にしとかんとな。本当は思いっきり抱きしめたかけど」

優しく包み込むような抱擁に身も心も癒される。

力強く抱きしめられるのも好きだけど、こんなに優しくされるのも大事にされてるようで嬉しい。

「今やったら、触ってもよか?」

「もしかして、うなじのことば言いよっと?ここなら人に見られんけん……よかよ」