いつか、きっと。

ちょっと、友也ったら。

なにをボーっと突っ立ったままで黙ってるの?

口をポカンと開けて、私の方を向いてはいるけど。

視線を合わせられないと言うか、焦点が合ってるのかも分からない。

私の事ちゃんと見えてる?

せっかくスーツ姿がバッチリ決まっててカッコいいのに……。

どうしちゃったの友也。

さっきから全く言葉を発しようとしない友也にいい加減焦れてきた。

私のこんな格好を見て、何も言ってくれないなんてちょっと酷くない?

友也のために美容師さんにお願いして着付けもメイクもしてもらったのに……。

「友也、友也ってば!ねえさっきから黙ったままで。ど、どうかな今日の私。ちょっとは成人らしくなったかな」

私が声をかけると、我に返ったような友也と視線が合った。

さっきまでは"心ここに在らず"みたいだったけど、今はちゃんと私を見てくれているって分かる。

友也の顔が心なしか赤く見えるのは、気のせい?

私の傍まで歩み寄った友也が、耳元に唇を寄せて、囁いた。

「今日の明日美いつもより……綺麗か」

えっ、本当に!?

まさか友也の口から私の事を『綺麗か』なんて言ってもらえるなんて!

今度は私がポカンとして友也を見る羽目になった。

「ほら、始まるけん座ろうで」

私の手を引き、最前列の右端に私を腰かけさせた友也は、私の直ぐ後ろの席に座った。

私の隣には真実、その隣に京子。

男子は私たちの後ろに三人並んでいた。

どうも後ろからの友也の視線が気になる……。

アップに纏めてもらった髪はバッチリだよね。

私が気づかない間に乱れたりしてないといいけど。

「ねぇねぇ明日美。さっき友也くんから何て言われたと?私たちの前であがんラブラブな仕草ば見せつけるとは友也くんもやるねー」

小声で真実がこっそり聞いてきた。

そ、そんなんじゃないのに。

「あれは、その……。『式の始まるぞ』って事ば言われただけ」

「えー!絶対嘘やろー!『早よう二人きりでいちゃつきたか』って言うたとやろ?」