「ありがとうございました」

3人の女子高生を見送って、カウンターから出た。

返却済みのDVDを籠に入れて、陳列棚に向かう。


一つずつ棚に戻しながら、整理整頓していく。


それにしても、ウルフって若者に人気なんだなぁ。

時々、夜に唸りを上げる何台ものバイクを見かけるけど、あれなのかもな。

興味が無いから、気にして見てなかったけど。


集団で群れてる若者達って感じなんだろうなぁ。

抗争だかなんだか知らないが、一般人に迷惑かけなきゃ良いけどさ。


そんな事を考えて、ふっと頭に浮かんだアンバー。

そう言えば、あの夜の彼もそう言う出で立ちだった様な。

不良と呼ばれる部類の人種の彼。


目元にかかるアッシュブラウンの髪、色っぽい口元。

あれは極上の部類だったなぁ。


名前・・・なんだったっけ?

あれ?教えてもらったような・・・ま、いっか。


まぁ、もう会うことは無いだろうから。



「さぁ、仕事仕事」

頭の中から、雑念を掻き消して作業を再開した。

関係ないことをいちいち考えてても仕方ないもんね。

今はバイトに勤しもう。










「響ちゃん、休憩しよう」

本屋から戻ってきた社長が、ドーナツ屋さんの紙袋を手に声をかけてきた。


棚戻しもちょうど終わったところだったので、素直に頷いてカウンターへと戻る。



「いや~響ちゃんは働き者で助かるなぁ」

山積みなってた返却済みのDVDが置き場から無くなってることに感動してる社長。

いやいや、給料分は働きますよ。


「そうですか」

「そうそう。響ちゃんが入る前に止めた子はサボってばっかりだったからね」

「はぁ・・・」

社長の緩い感じが悪いんじゃないのか? と思いつつも曖昧に返事した。


私の入ってる時間はだいたい二人のバイトがいる。

今日は社長が居るので、もう一人はお休みだけど。

彼女は、私と同じ高校生で真面目そうな感じの子。


10時以降は大学生の男の子が二人やって来る。

その人達と入れ替わりに私は帰宅。


ローテーションで週に4日ほど、バイトに来てる。

本当は週3日って話だったんだけど、最近何故か一日増えた。


私としてはお金になるので、バイト時間が増えるのはありがたい。


「さぁ、ここに座って食べよ」

社長は椅子を二つ並べてドーナツとパックのジュースをカウンターに置いた。


緩い・・・緩いよ、社長。

カウンターはテーブルじゃないからね。