「響ちゃんは何の競技に出るの?」

ワクワクした様子で聞いてくるのは光希。

「綱引き」

私の言葉にみんなが目を丸める。

いやいや、何を驚いてるの。


「綱引きって、お前」

口元に手を当てて笑いを堪えながら言う晴成を鋭く睨む。

「千里が綱の後方はサボれるって言うし」

「ククク、そっちかよ」

「それ以外に何があるの」

遠慮なく笑う晴成にイラッとした。


「体育祭、参加してなんぼじゃねぇの?」

瑠偉は率先して参加しようよね。

「考査に入らないなら参加もしたくない」

無駄に体を動かしたくない。


「うわっ、現実的じゃね?」

「何とでも言って。私は楽したいの」

瑠偉にそう言ってのけると、

「響ちゃんらしいね」

と光希が笑った。


「まぁ、響の怠そうにしてる顔を見に行くか」

「そうですね」

晴成と光希が何故か2人で話を完結させる。


いやいや、ちょっと待って。


「怠そうってなによ」

心外だと抗議すると、

「体育祭楽しみなのかよ?」

と晴成が聞く。


「いや、面倒臭いけど」

「だろ? だったら楽しむより、怠そうにしてるのが目に浮かぶぞ」

「・・・クッ・・」

図星を言われ押し黙る。

間違いなく、怠いと思って過ごしてる。

そして、千里に怒られてるんだろうなぁ。


明日の自分の姿が頭に思い浮かんだ。


「まぁ、明日でお前がウルフでどの位置に居るかを知らしめる、覚悟しとけ」

晴成の言葉に、とうとうそんな日が来るのかと溜め息をついた。

ウルフに入った以上は、その日が来ることは分かってたけど。


ウザい視線に晒されるんだと思うと辟易する。

女の子達の血走った目は、別の意味で怖い。


「明日、楽しみぃ」

ほくほく顔で光希が笑う。


「他校に行くのは久しぶりだな」

豪までどこか楽しそうだ。


「来るのは良いけど、問題は起こさないでよ」

迷惑だから。

浮かれるメンバーに釘を指す。

乱闘騒ぎとか冗談じゃないし。


「その辺は心配要りませんよ。西南高校はうちの支配下にありますから」

「ゲッ・・・マジで?」

まさかの傘下入りしてた事に驚く。


「ええ。ウルフのメンバーが校内を仕切っていますからね」

そんなこと初耳だけど。

学校に入学して数ヵ月経つのに知らなかった私って、大丈夫かな。