「どうせ変な噂が流れんなら、はっきり知らしめた方がいいんじゃねぇか?」

ゆるりと口角を上げた晴成はどこか楽しそうだ。


「嫌」

ウルフとつるんでるなんて広まったら、派手な女達の餌食になる。

別に彼女達なんて怖くないけど、面倒なことになるのは嫌だ。


「響さん、流れた噂で何かを勘ぐられるよりは、俺達の仲間だとはっきり言っておいた方がかなり抑止力になりますよ。それに響さんの実力も知れ渡るので、下手に手出しをしてこないと思います」

秋道、それ正論だけど。

かなり面倒臭いよ。


「もう諦めて仲間になれって」

な? と白い歯を見せて笑う瑠偉。


「響ちゃんにウルフに入って欲しい」

期待を込めて私を見ないで、光希。

「仲間になったら、手合わせできる」

それしかないの? 豪。

彼はどうしても私と手合わせしたいらしい。


さて、困った。

どうするべきだろうか。

思わぬ方向に事態が進んでる。


仲間なんて要らないって思ってきたのに、どうしてだろうね・・・ウルフの皆と居るのが嫌じゃないんだ。

口では嫌だと言えても、私の本心が彼らと居ることを楽しんでる。



「響、決定事項だ。仲間になっとけ」

総長の顔をして私を見る晴成。

「・・・それには条件がある」

仲間になるなら、対等でいたい。

だから、姫なんて言う立場には甘んじたりしたくない。


「んだよ?」

「ウルフの兵隊の1人としてなら、仲間になってもいいよ」

同じように戦い、守られるだけの存在じゃないなら。

それが条件だ。


「えぇ~姫で良いじゃん」

光希が不服そうに唇を尖らせる。


「私に姫なんて似合わない」

「黙ってたら姫みたいじゃね?」

おどけてそう言った瑠偉を冷淡な瞳で見据える。


「う、嘘です。ごめんなさい」

「謝るなら最初から言わないでよ」

ううう・・・と縮こまる瑠偉に、低い声で告げた。


「あ、今なら瑠偉を蹴り放題って言う特典もつくよ」

リズムのよい口調で光希が言う。

「ああ。それは面白そう」

黒い笑みを口元に浮かべ頷いた。


「む、無理。あの蹴り食らったら死ぬから」

顔の前で世話しなく手を振る瑠偉に、笑いが起こる。


「・・・俺も食らってみたい」

・・・豪、どうしても私と対決したいんだね。


彼の執拗な執念みたいなモノが見えて、そのうち相手して上げてもいいかな? ぐらいには思えた。