晴成に連れてこられたウルフの溜まり場の二階の部屋。

なんでもここは幹部以外が入れない幹部室だと言うことを、今日になって知らされた。

前の時に知ってたら入らなかったよ。

一回入っちゃったら、もう一緒なのでうだうだ言わずに前と同じソファーに座ったけど、内心は複雑。

まぁ、今はそれどころじゃない空気が漂ってるので、お口にチャック。


晴成と秋道は険しい表情を顔してる。

瑠偉はやけにニヤニヤしてる。

豪は・・・よくわからない顔だ。

4人とも、何を考えてるか読み取れない。


「・・・巻き込んで悪かったな」

静寂を破ったのは、済まなさそうな顔をした晴成。

「あ・・・別に」

被害にあってないし。

そりゃ、ちょっと驚いたけどね。


「それと・・・助かった」

「ああ、ん。それはいいよ」

私自身も危なかったから、自己防衛的なものだからね。



「て言うか、響ちゃんすっげぇ強いな」

まってましたとばかりに声を出したのは瑠偉。

「ん、まぁね」

伊達に小さい頃から空手やってない。



「何か武術の心得でも?」

秋道にそう聞かれ、

「空手をね、少し」

と返した。


「なるほど、あの鋭い蹴りはそのおかげですか」

感心したように言う秋道に、

「ん、まぁ」

頷いた。

あまり深く聞いてほしくない。


「でも、あれは喧嘩慣れした動きだった」

晴成は、神妙な面持ちで言う。


あ・・・まぁ、痴漢撃退とかで、ちょっと使ってたからなぁ。


「そんなに喧嘩なんてしてないよ」

喧嘩じゃなくあれは、あくまでも撃退だ。


「あの蹴り惚れ惚れしたぁ~」

跳ねる勢いで光希が言うと、

「だよなぁ。格好よかった」

と瑠偉が同意したようにうんうんと頷いた。


「そ」

嬉しいような恥ずかしいような。


「ぜひ、今度一度手合わせを」

そう言った豪は期待を込めた視線を向けてくる。


いやいや、なぜ、そうなった。

豪みたいな大きな体格の相手とやるのは疲れるから、正直嫌だよ。


「ちょっと・・・それは」

言葉を濁してやり過ごす。


「あの動きだけ見てたら、晴成ともいい勝負しそうだよなぁ」

両手を後頭部に当てて瑠偉はそう言って笑う。

晴成とも戦わないよ。


「さすがに無理。さっきのあれは敵が油断してたから仕留められた」

体力と体格で差があるのに、本気の男を2人も相手してあんな簡単に勝てない。