「一応、春香ちゃんが逃げられるように逃げ道だけは作ってるつもりだけど……そんなに聞きたいなら教えてあげてもいいよ」


ニコリと笑って、そう言った先輩。

今まで怒ってた理由を知りたかったはずなのに、どういうわけか聞かない方がいいような気がしてきてしまうのは何でだろう…。


「春香ちゃんに聞く気があれば、だけどね」

「え、と…」


背中に冷や汗が流れる。


ドクドクドク…と全身を駆け巡る鼓動が、嫌なものを察知したかのように感じた。

だから、わたしが出した答えは───


「や、やっぱり 遠慮しておきます…。」


興味本位で聞いていいようなものではないような気がしたから。


それをお見通しだったのか、はははっと笑った先輩。


「春香ちゃんにはまだまだ時間が必要みたいだからね?」


何の時間が必要なのか。
それを聞くことさえもできなかった。