「うん。試しに今塗ってあげようか?」
──そう言うと、慣れた手付きでリップをわたしの唇に塗っていく。
ほんの数秒後、「できた!」と言って鞄から鏡を取り出してわたしに手渡してくれる。
「どう? 違うと思わない!?」
「……これ、ほんとにわたし…?」
鏡の中に映っている人物は、確かにわたしなのに、雰囲気がいつもの違って見える。
リップのおかげでほんのり色づいて、ぷるぷるの唇になっていた。
「ほら、やっぱりリップ塗るだけでも結構変わるよね! 春香に女の色気が増した気がする」
「な、何言ってるの! そんなことないって!」
「あるある。とりあえずそれ今日貸してあげるから、お昼久遠先輩のところ行く前に塗るんだよ? いい?」



