「…多分わたし、その頃からもう智紘先輩のこと好きだったかも…しれないんです。」

「えっ…?」

「先輩にされたキスが、その……嫌じゃなかったので…」

「そうなの?」

「…はい。それよりも先輩が、キスを覚えてなかったことに少なからずショックを受けてしまいまして…。」


寝ぼけていたら覚えてなくて当然なのに…。


──でも、そのことを忘れることができなかったのは、失いたくなかったからだと思う。

先輩とのキスを。

無かったことにしたくなかった。


「……だから、わたしにとっては先輩との、…き、キスは、これで2回目というか…。」

「…春香ちゃん。」