あのまま連れて来られたのは、空き教室。


さっきの出来事からほんの数分しか経っていないためか、何から聞けばいいのか分からないわたしは終始無言。

そんな沈黙の時間を壊したのは智紘先輩。


「春香ちゃん、ごめん」

「えっ……?」

「俺のせいで春香ちゃんが怖い目に遭ってたなんて……」

「あ、あの…智紘先輩、」

「しかも怪我までさせちゃって…」


その言葉にピンとこないわたしは、「怪我…?」と小さく呟くと、それを聞いていた智紘先輩が、わたしの手を掴む──


「ここに怪我してたじゃん」

「あっ…! それは怪我というよりは、ただの擦り傷というか…」