優しくされたことなんかない。
突き飛ばされて、脅しまがいなことを言われて、怖い思いしかしてない。
思い出すだけで手が震えてくる。
その場にしゃがみ込みたくなる──
「ねえ、ちょっとお話したいから借りてもいいかなあ?」
「え? …あー、俺は大丈夫だけど、春香ちゃんこの後用事あるって言ってたよ」
「そうなの? あっ、でもね、話って言ってもすぐ終わるんだけど…」
わたしの肩にポンッと手を置き、「どうかな?」と智紘先輩に話しかけるように声をかける。
っ──…
ほんとは怖くて行きたくない。
嫌だ、と言って逃げ出したい。



