パシられ中だというのに嬉しそうな顔を浮かべながら、飲み物を選んでいく智紘先輩。


「ジャンケンで負けてなかったら、こうやって春香ちゃんと会えてなかったってことだもんね。大和に感謝かなー」

「え、…感謝…?」

「そりゃそうだよ。だって久しぶりに春香ちゃんに会えたんだよ? 嬉しいに決まってるじゃん」

「なっ…!」


智紘先輩。またそんなこと……

彼女がいるのに……

それにほんとは──


「……そんなことなんて思ってないくせに」

「え?」

「あっ、いや、何でもないです…!」


……わたしにはそんなふうに優しい言葉をかけてくれるけど、彼女さんの前ではわたしのこと面倒だって言ってたはずなのに…


──ああ、ほんとに先輩はずるい人だ。