「久遠くんっ」 聞き覚えのある声がした。 あっ……。 あの人、この前の先輩だ──。 「久遠くん、おはよっ」 「…ああ、うん」 この前は怖い顔でわたしを見ていたのに、智紘先輩の前ではすごく可愛らしい女の子の顔をしていた。 「紬ちゃん、ちょっとストップ!」 いかにも今すぐにでも智紘先輩の元へ行って、問いただそうとしている雰囲気が伝わってきて、慌てて紬ちゃんの裾をギュッと掴んだ。 「何で止めるの!?」 「だって……」