「……っと、にかく、早く手を離してくださいってば…!」
「えー。今言いかけた言葉は?」
「……もう忘れました」
「うそ。早くない!?」
「早くないです! それより早く離してくれないと智紘先輩のこと、き…」
「分かった分かった! 離すから!」
慌てながら、「嫌いとか言うのなしね!」と言って、パッと解放される手。
「春香ちゃんすぐ嫌いって言う…」
「それは先輩が離してくれないからですよ」
わたしだってこんなこと言いたくない。
だって───
…先輩のこと嫌いじゃないのに…。
むしろ、その逆で
智紘先輩のこと好き、なのに───



