さっきまで怪我をした部分が痛かったはずなのに
智紘先輩がキスをしたその瞬間、痛みなんて吹っ飛んで、
そこがやたらと熱く感じた。
「もし、このキズが残るようなら俺が春香ちゃんごともらってあげる」
「なっ…!」
「まぁ、でもこのキズなら多分良くなると思うから安心だけど。これからは怪我には気をつけるんだよ?」
「……へ、変態っ…!」
「ただキスしただけで変態呼ばわりなんて、春香ちゃん厳しいなぁ」
「だっ、てそれは───!」
「それは?」
「───」
大きく開いた口から出たのは、ただの空気だけ。
言葉はのどの奥に張り付いたままだった。



