「えー、もう少しだけいいじゃん」
「だ、ダメですっ…」
「なんで?」
「なんでって───…」
───先輩には、彼女がいるじゃないですか。
付き合ってる人がいるのに、こんなことしたらダメじゃないですか。
「理由教えてくれないってことは嫌ではないんだよね? そう解釈するよ?」
「〜〜っ…と、にかく、離してください…!」
もう片方の手で、智紘先輩の手を引き離そうと試みる。─が、怪我をしていたことをすっかり忘れて力を入れる。
「──痛っ…。」
「え、春香ちゃん怪我してるの…?」
「あっ、いえ、べつに!」



