──ああ、ダメだ…。

智紘先輩を目の前にすると、あのキスを思い出してしまう……

そのせいでまともに顔を見ることができない。


「俺じゃなければ誰に会いに来たの?」

「えっ、と……」


一瞬だけ、チラッと大和先輩を見る。

─と、それに気づいた本人が、「え? 俺?」と冗談っぽく笑った。


「えっ…春香ちゃん。それ、まじ?」

「……は、はい。」


だって、智紘先輩に好きな人がいるのか聞くのは無理だもん…。


「大和に会いにここまで来たの!?」

「え? …そ、それはちょっと語弊があるというか…。」


周りの人が聞いてたら勘違いされそうなレベルを、智紘先輩はボリュームも気にせずさらりと言ってのける。

そのせいでヒヤヒヤさせられっぱなし。