一時間目終わりの休み時間。
大和先輩のいる教室を覗いて見る。─が、どこにも姿がなく、来た道を引き返そうと廊下を歩いていると
「あれ、春香ちゃんだー」
と、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
や、やばい。
今は出会いたくなかった…。
「…ち、智紘先輩…。」
その横には、大和先輩もいた。
わたしに気づくと、「よ。」と手短に返事をする大和先輩は、やっぱり智紘先輩とは性格が違っていて、二人揃っていると不思議な感覚だった。
「この前はありがとね」
「えっ?」
「兄貴から聞いたんだけどさー、お見舞いに来てくれたんでしょ? でも、熱がやばくてあんま覚えてないんだよね」
「あ、…そうなんですね」
……ということは、あのキスのことも覚えていないってこと…。
ホッとしたような残念なような。



