「あの…手を離して、ほしいんですけど…」
この距離なら声は届いているはずなのに、
どうして智紘先輩は何も返してくれないのかな。
……それとも、この状況が理解できてないから固まってるだけ…?
熱でそれどころじゃない…?
「………春香ちゃん…が、いる。……夢?」
「…え?」
今、夢って言った……?
もしかしてこれを現実だと理解してない?
…そうなると、今目が合っている気がするのは、気がするというだけで、意識がはっきりしてるわけではない…?
「…春香、ちゃん…」
とろんとした瞳が、わたしを捕らえる。
いつもと違う先輩。
色っぽく見えるのは、熱のせい。



