先輩にとっては何ともない言葉かもしれないけど、それを聞いたわたしの胸の中はやたらとうるさかった。


「春香ちゃん、笑ってる方が可愛い」

「…っ」

「ほら、よく言うでしょ? 女の子は笑うと花が咲くみたいに可愛くなるって」

「そ、そんなの…知りません」


スカートの裾をギュッと握り、そのドキドキを抑えようと必死になるも、次から次へと先輩はわたしをドキドキさせる。

そんな言葉ばかりを言う先輩は、きっと女の子の扱いに慣れてるんだろうなぁ…。


「ねぇ、春香ちゃん」

「…な、なんですか」


何を言われるのだろう、と身構えていると──


「そうやって笑うと、きっと春香ちゃんの周りにいつのまにか人って集まると思うんだ」


「…っ、そ、そんなの……先輩には、関係ありません…!」


先輩がわたしのために言ってくれてるんだと頭では分かっているのに、それを突っぱねてしまうのは、まだ先輩のことを信頼できていないから。