自分の置かれた状況を見て勝ち目はないと、しゅん…としていると、「春香ちゃん」と先輩がわたしを呼んだ。

チラッと先輩を見ると、いつの間にか顔が近づいてきていて驚いたわたしは、思わず顔を背けた。

─が、予想していたものとは違った。




「春香ちゃんは俺にドキドキしてる?」




──耳元にかかる吐息。と、先輩の低い声。

その二つが、わたしの思考を混乱させる。



「ねぇ、春香ちゃん。答えて」

「…せ、んぱい……」

「ダーメ。ちゃんと名前で呼んで」

「っ──…」


智紘先輩の声がクリアにはっきりと聞こえて、それだけでドキドキが加速する。


先輩は、ずるい…。

そんな質問聞かなくても分かるはず、なのに…