わたしの髪を触りながら、「じゃあさー」と呑気に呟く智紘先輩。
「このままでいいから俺の質問に答えて?」
「えっ!?…そ、れは…」
「すぐに終わるから大丈夫」
先輩の言う“大丈夫”が全く信用できないわたしは、しばらく首を縦には触れなかった。
─が、そんなことお構いなしに、わたしの返事を待たずに先輩は話を続ける。
「今、壁ドンみたいなことしてるでしょ?」
か、壁ドン……。
…漫画の中だけの話かと思ってたのに……
「…って、その自覚があるなら早く、離してください…!」
「春香ちゃんダメだよ。ちゃんと言葉は最後まで聞かないと離してあげないよ?」
「うっ……。」
何をどう言えばわたしがおとなしくなるのかを先輩は理解している。
もし仮に今わたしが暴れたとしても、先輩はきっと驚くことさえもしない。
それどころか余裕な顔さえ見せるだろう。



