「春香ちゃんがおとなしくしてくれたら俺もこんなことしなくて済むんだけどなぁ?」
「……それ、絶対嘘ですよね…」
ボソッと小さな声で嫌味を言ってみると、「何か言った?」と笑う智紘先輩。
これ以上逆撫でしてはわたしの身が危ない、そう思って「何でもないです」と首を振った。
今もなおわたしの髪を弄ぶ。
こんなこと人生で初めての経験で、ドキドキと緊張が張り詰める。
それなのに先輩は手を離そうとしない。
「あ、の…!」
「んー?」
「そろそろ離れて、ください…っ!」
いくら物置状態で空き教室になっているからといっても、ここに人が来ないとは限らない。
こんなとこでわたしたちのこの状況を見られでもすれば、その日のうちにうわさは広まってしまうだろう。
そうすれば、ここに来るどころか学校中にわたしの居場所はなくなってしまう。



