反論するわたしに痺れを切らしたのか、「しょうがないなー」と言って、パッと手を解放してくれた。
ホッと一安心して胸を撫で下ろしている。─と、その瞬間わたしの両側に伸びてきた腕が、またもやわたしを拘束する。
「──いい子にしていられない口は、俺が塞いでしまおうかな。」
壁に両手をついたまま、わたしを逃がさないとする。キラリと光るその瞳は、まるで肉食獣のものだ。
一歩でも回答を間違えてしまえば、言葉通りに口を塞がれてしまいそうな勢い。
「…あ、の……」
目の前に立っている智紘先輩があまりにも近すぎて息をするのでさえも思わず躊躇ってしまいそうになる。
「春香ちゃんは、よっぽど俺にキスしてほしいみたいだね」
「ち、違っ…」
思いきり否定したい。のに、することができないのは、この距離のせい。



