「ねぇ、春香ちゃん。どうしても俺とは一緒にいたくない?」

「えっ…?」

「春香ちゃんは俺とうわさになんのが嫌なんだもんね」

「いや、あの…」


シャツの袖をキュッと掴んだままそんなことを呟く智紘先輩は、わたしの返事など聞こえていないのか、ハア…とため息を吐いた。


先輩何を言ってるの…?

先輩とうわさになるのが嫌なんじゃなくて、ある事ないこと言われる“うわさ”が嫌なだけなのに…


「春香ちゃんに嫌な思いさせちゃってごめんね」

「あの、先輩…?」


やっぱり、さっき強く言いすぎちゃったのがいけなかったのかな…。


「そもそも俺、春香ちゃんに好かれてたわけじゃなかったもんね」

「いや、だから、あの…」

「春香ちゃんがいいって言うまで俺、おとなしく一人でここにいるから」