「な、にしてるんですか…?」


まるで駄々をこねる子供がお母さんの洋服の裾をギューっと引っ張っている姿と重なって見えた。


「春香ちゃんがこれからも俺とお昼一緒にいるって約束するまで離してあげない」

「約束って……元はと言えば、智紘先輩が原因であんなうわさが流れてるんですよ?」


わたしが責められているような気分になってムッとして言い返すと、しゅん…となった。智紘先輩の頭に垂れた耳でもついているのかと錯覚してしまうくらい落ち込んでいるように見えた。


言いすぎた…?

いや、でもそんなに強く言ってないし、そもそも先輩が悪いんだもん…。

わたしが心を痛める必要なんてないはずなのに、なぜか罪悪感を感じてしまうのは、智紘先輩がそんな顔をしているから。


いつもニコニコ明るい先輩がそんなふうに落ち込んでるのは似合わない。
むしろ、先輩にはずっと笑っていてほしいって思ってしまう。


……な、なんでだろう。

気持ちが矛盾しちゃってる…。