「だ、から、それは──…」
智紘先輩がこの前、中庭でしたあの事を説明しようとしたけど、目の前にいる先輩がなぜか楽しそうに笑っていた。
その姿を見て“ああ、からかわれてる”とすぐに悟ると、わたしはムスッとして見せた。
そしたらさすがの先輩もまずいと思ったのか、慌てて言葉を取り繕う。
「あ、でもね、あの子たちは相手が春香ちゃんだとは知らないから安心して」
「…。」
ほんとなのかな…。
先輩の言葉って、いまいち信用できないところがあるもんなぁ。
「嘘はついてないよ。ほんとにあの子たち春香ちゃんには気づいてないから!」
わたしがなかなか信用しないからか、言葉が次から次へと溢れてくる先輩。
「ほんとだよ! ね!? 信じて!」
「……ほんとですか?」
「うん。あの場所で春香ちゃんとしか会ってない俺は相手が春香ちゃんだって知ってるけど、あの子たちは“俺と女の子がキスしてた”とだけしか言ってこなかったから」



