「せ、先輩っ……離して、ください…っ」
「じゃあ名前で呼んで?」
「ち、ひろ 先輩…っ」
顎を持ち上げられたまま身動き一つできなくて、恥ずかしさが限界に達したわたしはキュッと目を閉じた。
その数秒後、「ハァー」と小さなため息が聞こえてきた。
ため息をつきたいのは、わたしの方なのに……
「もう。春香ちゃん、それ絶対やっちゃダメなやつだってばー」
目を閉じたまま、先輩が言う、“それ”とはどれのことを示しているのか考えてみたけど結局分からなかった。
……ていうか、いつになったらこの体制から解放されるの…。
先輩が顎を持ち上げている手を離してくれたら、少し距離をとることができるのにこのままじゃ、わたしの心臓が持ちそうにない…。



