「うわさのこともあいつが話してくれると思うから、とりあえずあの場所行ってみて」
「…大和先輩は行かないんですか…?」
“二人きり”というよりはまだ大和先輩がいてくれた方が確実に安心できる。
小さな望みを胸にギュッと拳を握りしめて返事を待つけど、先輩は首を横に振った。
「あいつをからかうのも楽しいけど、昼休みだけは自由な時間与えてやりたいしね。だから春香ちゃんだけで行って」
その瞬間、小さな望みは打ち砕かれる。
できることならあの場所へ行くのは避けたかったけど、大和先輩にそう言われた手前断れるはずもなく、「…はい。」と渋々頷いた。
「じゃあ俺行くね」
渡り廊下を歩いて行く大和先輩。
一人ポツンと取り残されたその場所で、「はぁ…」と小さくため息を吐いたけど、スゥーっと静かに消えていった。



