だから私はそれ以来、逢坂くんが学校に来た日は出来るだけ彼を見ないように意識を集中させた。
視線を感じても絶対に振り向かない。
目が合ってしまうかもしれないから……。
休み時間になればすぐに席を離れて詩織ちゃんのところへ向かった。
「春川、俺も手伝ってやろうか?」
掃除の時間のゴミ捨てへ行く時、逢坂くんが声をかけてくれた。
心臓がドクンっと波打って慌てて首を横に振る。
そして逃げるように廊下を走り出した。
それ以降も時々声をかけてくる逢坂くんに、私は頷いたり、誰にも聞こえないくらいの声で小さく返事をするだけだった。
逢坂くんには、感じが悪いと思われたかもしれない。
いきなり態度を変えられたら、誰だっていい気分はしないだろう。
でも、もし橘さん達が見ていたらと思うとそうするしか出来なかった。
そうしなくてはいけないのだと自分に言い聞かせた。



