【完】今日もキミにドキドキが止まらない




「気をつけるよ」と小声で返事をしながら、内心ではしまった、と思い、不安にかられた。


だって、そんなこととはつゆ知らず私は逢坂くんと普通に話しをしていたのだ。


……橘さんの好きな人と。


入学当時の出来事だって誰にも知られてはいけないと、今さら焦り始めた。



橘さんはクラスの中でも一軍だ。

誰が見ても、一軍の中のトップにいる。

コミュニケーション能力の高さはもちろん、その抜群のルックスは女子の憧れの的。

一番厳しいと有名な先生でさえ、橘さんには甘いとみんなが言っている。



現に夏休み前。
些細なことで橘さんの機嫌を損なった女子がいた。

男子までもがなんとなく距離を置いているような感じもした。


その子はいつの間にかグループから外されていて、教室に来なくなり、今では保健室登校をしている。



“あっち側にはなりたくないよね”


と、橘さんを取り囲むみんなが言っているのも聞いていたし、自分だったらと想像するだけで怖かった。



橘さんの機嫌を損ねるということは、クラスのみんなから嫌われるということだ。