【完】今日もキミにドキドキが止まらない




先週の目撃情報によると逢坂くんは学校の裏手にある倉庫へと入っていったらしい。

他校の……それも上級生に呼び出された逢坂くん。

少々ダメージを負っていたらしいけれど、瞬殺だったと男子が興奮気味に話していたのを聞いた。


何対何だったか、秒殺だったのか。
これまで男子達が騒いでいたのを何回聞いただろう。


けど、そうやってはしゃいでいる幼稚な男子達と逢坂くんは違う。


雰囲気がもう中学生らしからぬ大人っぽさを放っているのだ。


すっと伸びた切れ長の瞳。
歩く度に揺れる柔らかそうな髪。

それは癖なのか、ゆるくかかったウェーブの髪は色素が薄く少し茶色い。


そこから見えるシルバーのピアスに気づいたのは、席替えをして隣になってから。



「喧嘩は、あの、危ないから……」



気だるげな逢坂くんが机に肘をついて、私の方をじっと見ているからその先が言えない。