「最初は迷ってた。医学部に入れば、医者になれば誰かの命を救えるかもしれないって。だけどその可能性があるのに、それを迷ってる俺が医者なんか目指していいのかって。それって、本気で誰かの命を救いたくて医者を目指してる奴にも失礼だろ?」



ぱっとこちらへと振り返った顔は真剣そのもので。


私だったら自分の進路に精一杯で、誰かの夢のことまで考える余裕なんかないだろう。


工藤くんの心の内に触れて、やっぱりどこまでも真っ直ぐな人だって改めて思った。


こうやって自分自身と向き合うことが出来る人。




「俺、ホントは全然勉強なんか出来なかったんだよね。小学校の頃なんか半分も点取れないこともざらにあったし」


「え!?工藤くんが……う、嘘でしょ?」


その発言は予想の斜め上をいきすぎて、すぐには信じられない……。



「本当のことしか言ってないけど?」



今の工藤くんからはこれっぽっちも想像もつかないもん。