「暇ならお母さんの手伝いでもしたら?」


「ん……」


「日菜ー。卵買ってきてちょうだい」



恨めしそうにお姉ちゃんを見ていたらお母さんの声が割って入ってきた。



「……卵?」


「もう。自分で言ってたじゃないの。卵焼きの練習、するんでしょう?」


「あ……」



冬休みに入ったらもう一度お母さんに教えてもらいながら卵焼きを作ろうと思っていた。


工藤くんが“また食べたい”って、言ってくれたから……。



「食べてもらえるといいけどね?クリぼっち」


「……お、お姉ちゃんの意地悪!犯罪級の顔面詐欺のくせに!」


「っ、な……犯罪級!?」



言ってやった言ってやった。

ついに言ってやった。



私はお母さんからもらった500円玉を握りしめて逃げるように外へ飛び出した。