それはほんの一瞬の出来事で、声も忘れて私は工藤くんの腕の中で固まった。



「日菜」


鼓膜を揺るがす程に近い工藤くんの声。



「工藤……くん?」



なにが起きているのか理解が追いつかなくて。


ようやく声になって確かめるように名前を呼ぶと、工藤くんはぎゅっと腕に力を込めた。



「……強引でごめん。少しでいいから、こうさせて?」



消え入りそうな声で工藤くんが言った途端、胸の奥がきゅーっと締めつけられる。



「……お前ってバカなくせに、どうして俺が言ってほしいことがわかるんだろうな」


「……っ、」



囁きかけるようにそう言うと、工藤くんが私の身体を優しく包み込んだ。